2024年7月、東京地検は、発売前の週刊誌の記事をSNS上に投稿した29歳の男性を著作権法違反の罪で起訴しました。一方で、同事件に関連し、出版社の前で抗議行動を行った容疑(威力業務妨害)については不起訴処分とされました。この出来事は、現代の情報流通と著作権保護、そして表現・抗議の自由のあり方をめぐる重要な論点を私たちに投げかけています。
事前公開と著作権の本質的問題
週刊誌記事の発売前投稿は、単なる“スクープ”や“告発”といった次元では済まされません。出版物が公に頒布される前に内容を漏らすことは、著作権者の「公表権」(著作権法第18条)を侵害する行為にあたります。今回の起訴は、その点を厳格に問うものであり、著作物を守るルールの実効性を示すものといえるでしょう。
一方で、著作権法は表現の自由とのバランスが極めて重要です。たとえば公益性のある内部告発など、場合によっては「正当な理由がある情報開示」も認められ得ますが、今回の事件ではそのような事情が明示されていない点も注目されます。
抗議行動と不起訴処分の意味
出版社前で拡声機を使って抗議した行為については、威力業務妨害容疑として逮捕されたものの、不起訴となりました。これは、表現行為としての抗議活動と「業務妨害」との線引きが極めて微妙な領域であることを示しています。検察が不起訴とした理由を明かしていないため詳細は不明ですが、実際の妨害の程度や、表現の自由への配慮が影響した可能性があります。
SNS時代の著作権と倫理
本件は、SNSが情報流通の中心となった現代において、個人がいかにして法的・倫理的責任を問われうるかを示す事件でもあります。「引用」「リーク」「暴露」といった行為が氾濫するなかで、情報の取り扱いに対する社会的責任の再確認が求められています。
この事件は単に「週刊誌をリークした一個人の違法行為」として終わらせるべきではありません。情報の流通速度が加速する今だからこそ、私たちは「表現の自由」と「知的財産の保護」という二つの価値のバランスをどう取るべきか、あらためて問い直す必要があります。