2024年末、ゲーム業界に一石を投じる訴訟が起こりました。サービス終了を迎えたユービーアイソフトのオンライン専用レースゲーム『ザ クルー(The Crew)』をめぐり、2人のユーザーが同社を訴えたのです。争点は明確で、「ゲームを購入した」というユーザー側の認識と、「限定的なアクセス権を提供しただけ」とするユービーアイの主張の食い違いです。
ゲームを“買う”とはどういうことか?
訴訟を起こしたユーザーは、ゲームパッケージやアクティベーションコードを購入した際、「このゲームは永久に遊べるものだ」と信じていたと主張しています。特に、2099年まで有効のコードなどもあったことから、そうした印象を受けたのも無理はないかもしれません。
一方ユービーアイ側は、ゲームの購入とは「無期限の所有権」ではなく、「一定条件下でアクセスできる限定的ライセンス権」に過ぎないという立場を取っています。このようなライセンス契約の文言は、利用規約の中に小さく記載されていることが多く、多くのプレイヤーにとっては意識しづらい存在です。
カリフォルニアの法律が鍵?
訴えはカリフォルニア州の「虚偽広告法」「不正競争防止法」、そしてギフトカードに関する法律違反も根拠に含まれています。ギフトカードが無期限で有効とされる州法のもとでは、「期限なしのアクティベーションコード」も同様に扱うべきでは、という論理です。
このように、単なる「ゲームサービス終了」に留まらず、法的な解釈や広告表現、ユーザーとの信頼関係までが問われる複雑な訴訟になりつつあります。
サービス終了と“デジタル遺産”の課題
デジタル時代の今、購入したはずのデジタルコンテンツが将来使えなくなるリスクは、あらゆるユーザーに共通の問題です。特に、オンライン接続が前提のゲームは、サーバー停止と同時に完全にプレイ不能になることも珍しくありません。
ユービーアイが続編である『ザ クルー2』や『ザ クルー:モーターフェス』にオフラインモードの追加を検討していると明かしたことからも、今回の訴訟が業界に一定の影響を与えているのは明らかです。
まとめ:この訴訟が投げかける問い
この訴訟は、勝敗以上に、ゲーム業界がユーザーに対してどのように「購入とは何か」「サービス終了後の扱いをどうするのか」を説明していくべきかを問いかけています。
プレイヤーが「自分が買ったものに納得して支払える環境づくり」が、今後の信頼構築に不可欠です。Steamなどではすでに“ライセンス表記”が導入され始めており、業界全体が透明性に向かう第一歩とも言えるでしょう。