2025年6月24日、講談社がロシア企業IQ Art Management LLCを相手取り提起していた著作権侵害訴訟が確定し、講談社の主張が大筋で認められる形で終結しました。この裁判は、近年増加する「無許諾イベント」に対する警鐘であると同時に、グローバル時代における知的財産保護の難しさと重要性を象徴するものといえるでしょう。
事件の概要
問題となったのは、2023年4月から10月にかけてロシア・サンクトペテルブルクで開催されたイベントにおいて、講談社の人気作品『進撃の巨人』など18作品が無許諾で展示物として使用され、入場料を取って営利目的で行われていたという事案です。
これを受け、講談社はロシアの仲裁裁判所に訴訟を提起し、結果的に15作品について著作権侵害が認定。約690万円の賠償金がIQ社に命じられました。
判決の意義
この判決は、単に一企業が勝ったという話にとどまりません。
- 国際的な著作権の尊重を促す判例
近年、漫画・アニメといった日本のコンテンツは世界的に人気を集める一方で、無許諾の海賊版配信やイベントが後を絶ちません。今回、ロシアという他国の裁判所が日本企業の訴えを認めたことは、著作権が“国境を越えて尊重されるべき権利”であることをあらためて示した象徴的なケースといえるでしょう。
- 文化の自由な享受と、著作者の権利とのバランス
人気作品をもっと多くの人に知ってもらいたいというファンイベント主催者の善意がある一方で、作者や出版社の正当な権利を軽視してよい理由にはなりません。無許諾イベントが収益を得る一方で、創作者には一切還元されないという構図が、文化産業の健全な発展を阻害するのです。
今後の展望と課題
講談社は今後も、国内外を問わず著作権侵害行為には「厳正に対処する」とコメントしています。しかし一方で、法的措置を講じるにはコストも時間もかかり、個別対応には限界もあります。今後は、業界全体での国際的な連携や、AIによる違法コンテンツ検知の活用、正規イベントのプロモーション強化など、複合的なアプローチが必要となるでしょう。
日本発のコンテンツが世界に愛される今だからこそ、その「文化の土台」を守るための著作権意識は、企業にも消費者にも求められています。好きな作品をこれからも安心して楽しめるように、私たち一人ひとりが“正規のルートで楽しむ”という選択をしていくことが、未来のエンタメ文化を支えることにつながるのではないでしょうか。