ニュース概要
世界知的所有権機関(WIPO)が発表した「2025年世界イノベーションクラスターランキング」で、中国から24のクラスターがランクインし、3年連続で世界最多となりました。国家知的財産権局の杜玉報道官は、この成果を「国家による高度な重視、投資拡大、法制度整備、そして企業や大学・研究機関のイノベーション能力向上の結晶」と位置づけています。
R&D投資の規模と国際比較
2024年の中国の研究開発(R&D)費は3兆6000億元、前年比8.3%増。GDP比2.68%はEU平均を上回り、米国に次ぐ「世界第2位のR&D大国」という地位を維持しました。投資の厚みは単なる数値ではなく、産業・大学・研究機関を貫く「持続的な技術革新の土壌」を形成しています。
知財保護環境の整備
中国国内における知的財産保護の社会的満足度は82.36点と過去最高を更新。特許保護の強化は単なる制度整備にとどまらず、国際的な信頼性の確立にもつながります。知財の「質」と「実用化」を重視する方向性が、今後の技術輸出やグローバル連携のカギとなるでしょう。
イノベーション主体としての企業と大学
国内の有効発明特許は501万件、うち企業が保有するものは372万件に達しました。企業が主体的に研究開発を進める一方、大学や研究機関も産業ニーズに即して成果を活用。特許譲渡・ライセンス登録は累計12万7000件に達し、知財の「動的活用」が加速しています。
先端地域クラスターの事例:粤港澳大湾区
深セン―香港―広州クラスターは、発明特許出願の12.1%、PCT国際特許出願の27.5%を占め、中国全体をリード。ハイテク企業や人材が集まり、国際的な「知のハブ」として機能しつつあります。今回、WIPOが香港でランキングを発表したことも、この地域の影響力を象徴する動きといえます。
今後の展望と国際的含意
中国のイノベーションクラスター戦略は、国内の経済成長のみならず、世界のイノベーション地図そのものを塗り替える可能性を秘めています。米国や欧州との競争関係を超え、アジア主導のイノベーション潮流を生み出す布石とも捉えられるでしょう。
特にグリーン技術・スマート製造・AIといった分野で、中国発の国際規格や技術標準が増加することは、グローバル産業秩序に大きな影響を与えるはずです。