中国が主導する「AI×知財」の未来──2025知的財産権保護ハイレベルフォーラムの示唆

2025年4月21日から22日にかけて北京で開催された「中国知的財産権保護ハイレベルフォーラム」は、知財とAIが交差する現代の最前線を映し出す重要な場となりました。国家知的財産権局が発表した「AIが関与する発明の特許出願に関する指針」や、特許審査における「創造性」判断基準の整備は、AI技術の急成長に伴う知財制度の転換点を象徴しています。

世界最大のAI特許保有国へ:中国の現状とWIPOの評価

WIPO(世界知的所有権機関)によれば、中国はすでに世界のAI特許出願の61%を占めており、量的には世界最大のAI特許大国です。特に注目すべきは、AI分野の特許出願件数の過去5年間の成長率が、他分野と比較して700%に達している点。これはもはや「AI技術の中国」といっても過言ではないでしょう。

生成AI分野でも、主要な特許保有者の半数以上が中国に所在するというWIPOの指摘は、中国が技術開発だけでなく、それに伴う知的財産権の確保・活用にも注力していることを示しています。

「創造性」の再定義:AI発明の制度的受け皿へ

AIが関与する発明においては、人間が従来担ってきた「創造的行為」との境界が曖昧になります。今回のフォーラムで明らかになった指針の整備は、こうした技術と制度のズレを埋める第一歩です。中国の審査実務では、AIが生成した成果物が人間の介在により明確な技術的効果をもたらす場合、その創造性を肯定する方向に舵を切り始めています。

これは日本や欧米の特許庁も直面するテーマであり、中国のこの先行事例は国際的にも大きな影響を与える可能性があります。

グローバル知財競争の新局面

AIによって生み出された発明をどう評価し、保護するかは、今後のイノベーション競争に直結する問題です。特に生成AIのように、学習済みモデルを活用して創作活動を行う領域では、「誰が創作者なのか」「誰が権利を持つのか」といった法的・倫理的課題も複雑化しています。

中国は国内指針の明確化を通じて、AI技術の加速とともに、知的財産制度の最適化を急速に進めています。これは単なる国内政策に留まらず、今後の国際標準に影響を与えうる動きとして注視すべきでしょう。

終わりに

中国がAIと知財の融合において先頭を走る今、各国はこの動きにどう対応していくのか。知的財産制度は、技術の進化に追いつけるか──2025年のこのフォーラムは、その問いに対する一つの答えを提示しているのかもしれません。