2025年3月末、中国科学技術発展研究院は「国家イノベーション指数報告2024」を発表しました。この報告によると、中国は国家イノベーション指数において世界10位にランクインし、2012年の20位から10年余りで大きく順位を上げています。これは、中所得国として初めてトップ10に入ったという点で、きわめて象徴的な出来事です。
国家イノベーション指数とは何か?
まず、このランキングが示す意味を整理しておきましょう。国家イノベーション指数は、各国のイノベーション能力を以下の5つの側面から評価しています。
- イノベーション資源
- 知識創造
- 企業イノベーション
- イノベーション成果
- イノベーション環境
いずれも研究開発投資、特許数、科学論文の影響力、産業構造、政策・法制度などを含む包括的な指標です。つまり、単に研究費が多いとか、スタートアップが活発という次元ではなく、国家としてどれだけ持続的に「新しい価値」を生み出す仕組みが整っているかを評価するものです。
中国の急上昇、その背景にあるもの
今回、注目すべきは中国が総合10位に入っただけでなく、その成長スピードの速さです。特に、以下のような成果が目を引きます。
- 研究開発者数、STEM卒業生数、高被引用科学者数で世界トップクラス
- 高被引用論文の数は世界1位、有効発明特許保有件数も世界1位
- ハイテク産業輸出額は世界全体の22.3%を占める
これらの成果は、中国が単に「ものづくり大国」から脱却し、「知の創造国」へと進化しようとしている証左といえるでしょう。国家主導によるR&D投資の拡大、大学と企業の連携強化、ベンチャーキャピタル市場の整備など、制度面での改善も評価されています。
まだ残る課題:成果と環境のギャップ
一方で、「イノベーション成果」(22位)や「イノベーション環境」(20位)の順位は総合評価に比べて低く、制度やインフラ整備の遅れ、また知財保護や国際投資環境の課題が浮き彫りになっています。
特に「法治環境」は34位と低く、グローバルな企業や研究機関との信頼構築において今後の改善が求められるでしょう。
世界は3極構造へ:アジアの台頭
報告書は、世界のイノベーション構造が北米・欧州・アジアの三極で形成されていると述べています。
- 北米(米国・カナダ)は依然として最大の研究開発投資地域
- 欧州はスイス・ドイツなど技術立国が牽引
- アジアは中国・日本・韓国・シンガポールなどが存在感を拡大
この中で、中国の上昇が特に顕著で、今やアジアの中心的存在になりつつあります。
日本はどう対応すべきか?
中国がすでに日本を上回るスコアを出している分野も多く、今後の動向次第ではさらに差が広がる可能性もあります。日本はイノベーションの種を育てる環境や技術者の地位向上にもっと積極的な改革が必要です。
たとえば、
- 研究開発への投資の「集中と選択」
- 国際共同研究の促進
- ベンチャーやスタートアップ支援の大胆な規制緩和
これらを本気で実行に移せるかが、今後の競争力を大きく左右します。
結びに
今回のランキングは、中国が科学技術で「世界と競争する国」へと本格的に変貌しつつあることを示しています。国際社会における技術覇権争いが激化するなか、日本や他の先進国も自国の立ち位置を改めて問い直す必要があるでしょう。
今後も、この「国家イノベーション指数」が示すトレンドを注視していくことが、未来を読み解く鍵となりそうです。