特許の概要
任天堂と株式会社ポケモンは、米国で2件の特許を取得しました。
- 第12403397号(9月2日承認)
「キャラクターを召喚して戦わせる」システム
- 第12409387号(9月9日承認)
「乗り物のスムーズな切替」に関する技術
前者は『ポケモン スカーレット・バイオレット』の“レッツゴー”システムに近い内容で、召喚したキャラクターが敵と遭遇すれば手動戦闘、そうでなければ自動戦闘に移行する仕組みが明記されています。後者は空・陸・水など複数の移動手段をシームレスに切り替える技術に関するものです。
技術的意義とゲームデザイン
「召喚と戦闘」の仕組みは、従来のターン制バトルを補完し、フィールド探索と戦闘を自然につなぐゲームデザインを可能にします。これは単なる操作性向上にとどまらず、プレイヤーの没入感を深める重要な要素です。
また「乗り物切替」の技術は、オープンワールド化が進むゲームにおいて移動体験の自由度を高める鍵となります。特に『Pokémon LEGENDS Z-A』のような新作タイトルに実装される可能性が高いでしょう。
訴訟との関係性
近年話題となっている『パルワールド』訴訟を連想する人も多いですが、今回の特許「7482585号(日本登録)」は訴訟対象外です。実際に訴訟で争点になっているのは「ボールによるキャラクター捕獲」など別の特許群です。
したがって、今回の米国特許取得は必ずしも対パルワールド戦略とは言えず、むしろ将来の任天堂・ポケモンタイトルに向けた通常の権利強化策と見る方が自然です。
業界全体への影響
ただし注目すべきは、アナリストFlorian Mueller氏が指摘するように、「召喚して戦わせる」という基本的メカニクスが特許として成立している点です。これは他のRPGやモンスター育成系タイトルにも波及しうるため、開発者は自社システムが侵害リスクを負わないか慎重に検討せざるを得ません。
特許権の存在はゲーム業界の革新を抑制する可能性もあれば、逆にオリジナル性を生み出す圧力として機能する可能性もあります。
今後の展望
10月発売予定の『Pokémon LEGENDS Z-A』では、移動手段の多様化や“レッツゴー”の進化形システムが導入される可能性が高いと考えられます。今回の特許は、その布石とも解釈できます。
任天堂とポケモンは、単なる訴訟対策にとどまらず、ゲーム体験の深化を狙って技術を権利化していると見るのが妥当でしょう。
まとめ
今回の特許は「法務」と「ゲームデザイン」の両面から意味を持ちます。
- 訴訟の布石としてよりも、新作タイトルの体験強化に直結する要素
- ただし業界全体に波及しうる“召喚×戦闘”の基本メカニクス特許
- 今後のオープンワールド・RPG設計における一つの分岐点