停滞から転換へ――韓中経済協力は「碧瀾渡精神」を取り戻せるか

韓国の李在明大統領が中国国賓訪問中に示したメッセージは、現在の韓中経済関係が直面する課題と可能性を端的に表しているように思われます。韓中貿易額が3000億ドル水準で停滞する中で、「新たな航路と市場の開拓」が必要だという指摘は、単なる経済政策論にとどまらず、時代認識そのものの転換を迫るものです。

停滞する貿易と「慣性」への警鐘

李大統領が強調したのは、技術革新や供給網の変化があまりにも速く、過去の成功体験や慣性に依存することの危うさでした。これは韓中関係に限らず、グローバル経済全体に共通する問題ですが、特に隣接する大国同士である韓国と中国にとっては、影響がより直接的に現れます。製造業中心の協力モデルが限界に近づく中で、新しい成長エンジンをどう描くかが問われていると言えるでしょう。

AIと文化コンテンツという新たな軸

今回の訪問で注目されたのは、人工知能(AI)と文化コンテンツ分野を新たな協力の柱として打ち出した点です。AIは製造業とサービス業の双方に変革をもたらす基盤技術であり、協力の余地は広範です。また、コスメや食品といった消費財、映画や音楽、ゲームなどの文化コンテンツは、両国が共有する文化的価値を経済的価値に転換しやすい分野でもあります。政治的緊張が生じやすい分野を避け、生活や文化に近い領域から信頼を積み上げようとする姿勢がうかがえます。

「碧瀾渡精神」が示す歴史的比喩

李大統領が基調演説で用いた「碧瀾渡精神」という比喩は印象的です。高麗時代、外交的緊張があっても交易と交流が途絶えなかった国際貿易港・碧瀾渡を引き合いに出し、変化の中でも連結と疎通を止めない姿勢の重要性を訴えました。製造業という堅固な基盤の上に、サービスやコンテンツという新たな価値を重ねていくという表現は、従来型協力の延長ではなく再構成を意味しているように感じられます。

経済人フォーラムと制度面での再起動

9年ぶりに開催された韓中経済人フォーラムには、韓国側からサムスン電子や現代自動車、LGなど主要企業トップが参加しました。象徴的なのは、7年間途絶えていた商務相会議が定例化され、FTA第2段階の議論が加速する可能性が示された点です。加えて、供給網協力や知的財産権保護に関するMOU締結は、実務レベルでの信頼回復を意識した動きと評価できます。

協力の未来はどこに向かうのか

今回の訪問と一連の発言から見えてくるのは、韓中関係を「量の拡大」から「質の転換」へと導こうとする試みです。貿易額の停滞は課題である一方、AIや文化分野といった新領域は、関係再構築の糸口になり得ます。ただし、それが実を結ぶかどうかは、政治的緊張や国際環境の変化の中でも、どこまで「碧瀾渡精神」を実践できるかにかかっているでしょう。

停滞を直視しつつ、過去に学び、未来に向けた協力の形を描けるか。今回の訪問は、その試金石となる一歩だったと言えるのではないでしょうか。