商標トラブルで暗雲?ジョニー・アイブとOpenAIの提携に立ちはだかる“名前の壁”

65億ドルの大型提携が発表直後に動画削除――その裏で何が起きているのか

2025年6月、元Appleのチーフデザイナー、ジョニー・アイブ氏とOpenAIがタッグを組んだAIハードウェア新興企業「IO Products」の構想が明らかになり、大きな注目を集めました。ところが、その直後にOpenAIのウェブサイトから関連動画とマーケティング資料が突如削除され、SNSでは「契約が破談になったのでは」といった憶測が飛び交いました。

OpenAIとアイブ氏の広報によれば、その原因は「商標権の争い」にあるとのこと。具体的には、同じくAI機器を開発している企業「IYO」が、「IO」という名称の使用を巡って訴訟を起こし、裁判所が使用差し止めを検討していると報じられています。

「IO」は使えるのか?ブランド戦略と法的リスク

Apple時代からデザインの重要性を説いてきたジョニー・アイブ氏にとって、ブランド名は単なる記号ではなく、製品哲学そのものと言っても過言ではありません。短く覚えやすい「IO」は、Input/Outputの意味も込められており、AIデバイスにふさわしいネーミングでしょう。

しかし、知的財産の世界では「シンプルで一般的な名前」ほどトラブルに発展しやすいのが現実です。「IO」という名称はすでに多くの企業が使っており、その中で「IYO」が先に商標登録していた場合、たとえ技術的・業界的に別分野であっても、商標侵害と見なされるリスクは十分にあります。

SNSで広がる臆測、背景にあるOpenAIへの“視線”

今回の一件は、技術提携の本質ではなく「商標」という表面的な要因で動画削除に至ったという意味で、OpenAIの広報リスクの高さも浮き彫りにしました。特に、最近のOpenAIは社内の人事混乱や資金調達に関する報道も重なり、世間の注目と警戒が集まりやすい状況です。

アイブ氏との提携という“華”のある話題でポジティブな注目を集めようとした矢先の動画削除。これがSNS上で「何かがおかしい」と捉えられるのも無理はありません。

今後の展開と見通し:ネーミング変更の可能性も?

今後の注目点は、「IO」という名称がこのまま使用されるのか、それとも訴訟リスクを避けてブランド名を変更するのかという点です。前者であれば長期的な法廷闘争が予想され、後者であれば早期に決着し、再びマーケティングが再始動するでしょう。

いずれにせよ、この一件は「テクノロジーとブランディング、そして法務」の交差点で起きた典型的なトラブルです。注目すべきは、名前よりもむしろ、その先にある“製品”が我々の生活をどう変えていくのか、という点でしょう。