情報社会の信頼を揺るがす ― PR TIMESへのサイバー攻撃が問いかけるもの

PR TIMESのサイバー被害が示す衝撃の事実

2025年5月7日、プレスリリース配信サービスを提供するPR TIMESは、最大90万件を超える個人情報と、発表前の重要情報が漏洩した可能性があると発表しました。企業の広報活動の基盤とも言える「情報の信頼性と安全性」が揺らぐ事件であり、今回のサイバー攻撃は、単なるシステム上の問題ではなく、情報社会における信頼の根幹を問うものです。

事件の概要と深刻性

PR TIMESは、プレスリリースという「企業からの公式情報発信」を担うプラットフォームです。その中で、未発表の情報や担当者の個人情報が外部に漏洩した可能性は、企業広報における“情報管理の破綻”とも言えます。

特に注目すべきは以下の2点です。

  • 漏洩の対象には未公開プレスリリース1682件が含まれたこと
  • 被害対象の個人情報が約90万件にのぼること

発表までのタイムラインと企業対応の是非

4月25日に異常検知 → 不正アクセスの確認 → 経路遮断と対策 → 5月7日に発表。
この間に、警察への申告を優先したことから、「情報開示の遅れ」に疑問の声も上がっています。企業として、法的・捜査的観点を考慮した結果であっても、「透明性」が担保されていたかどうかは検証が必要です。

企業広報プラットフォームに求められるセキュリティと倫理

PR TIMESは「情報を早く、正確に、社会に届ける」ための基盤を担っています。今回の事件により、今後、以下のような見直しが求められるでしょう。

  • 二要素認証の徹底、アクセス権限の細分化
  • 未公開情報の暗号化と自動削除ルールの強化
  • 外部攻撃に備えた定期的な脆弱性診断
  • 情報漏洩時の即時通知フローと公的機関との連携体制

これらは単なるITセキュリティの問題ではなく、社会的責任(CSR)と信頼の維持に直結します。

情報社会における「信頼インフラ」としての広報のあり方

SNSが主流となり、誰もが情報を発信できる現代において、PR TIMESのような「一次情報提供者」が信頼を失うことは、社会全体の情報混乱にもつながりかねません。本件を契機に、企業広報やメディアリテラシー全体の再設計が求められているのではないでしょうか。

再発防止は“技術”と“姿勢”の両立から

PR TIMESの迅速な対応と原因調査は評価できますが、今後必要なのは「攻めのセキュリティ」と「開かれた情報公開」です。
信頼を守るには、技術的対策だけではなく、危機時の誠実な姿勢も欠かせません。今回の事件が情報流通業界全体の教訓となることを願います。