6月3日、政府は「知的財産推進計画2025」を発表し、2035年までに日本の知財競争力を世界ランキング4位以内に引き上げるという野心的な目標を掲げました。現在13位の日本が、再びトップクラスに返り咲くには何が必要なのでしょうか?今回の計画のポイントとその実現可能性を考察します。
AIの抜本的活用で“創造の質”を変える
石破首相は「競争力のある知的財産を創出するため、AIの利活用を抜本的に強化する」と述べました。これは、単なる業務効率化ではなく、創造プロセスそのものを変革する狙いがあります。
たとえば、特許出願の文書作成、先行技術調査、画像や音声コンテンツの自動生成といった分野で、AIは既に一定の成果を出しています。今後、AIが知財創出の「共同発明者」になる時代も視野に入っているのかもしれません。
海外の頭脳を日本へ
計画では、AI分野などのトップレベルの研究者を海外から積極的に招致するための環境整備を打ち出しています。移民政策が慎重な日本にとって、これは大きな方針転換とも言えるでしょう。
世界のイノベーションは、国境を越えた頭脳の流動性に支えられています。英語環境、研究資金、起業支援など、実効性ある仕組みが整えば、日本が“知のハブ”となる可能性もあります。
アニメと観光で50兆円の経済効果
日本独自の知財資産であるアニメ・マンガ文化を軸に、「アニメツーリズム」や海外展開を加速させる方針も打ち出されました。目標は2033年までに関連産業の経済効果を50兆円に拡大すること。
これは単なる輸出ビジネスではなく、「体験」と「コンテンツ消費」を結びつけた戦略です。アニメの舞台を訪れる聖地巡礼型観光、ロケ地誘致、IPを活用した商品展開など、日本ならではの知財ビジネスモデルが期待されます。
知財戦略は“国力の戦略”
今回の計画は、単なる知的財産制度の話ではありません。これは、AI、人材、文化、観光、投資を含む“総合的な国力戦略”です。鍵となるのは、既存の制度や文化を変える覚悟があるかどうか。
2035年、再び世界トップ4入りを果たす日本を見ることができるか。その答えは、今始まる制度改革と民間の創意にかかっています。