2025年の大阪・関西万博の開幕が目前に迫る中、懐かしさと未来が交差するニュースが飛び込んできました。UCC上島珈琲が、1970年の前回大阪万博で大ヒットした「UCCコーヒーミルク入り缶」を復刻販売するとのことです。あの時代を知る人にはノスタルジーを、知らない世代には新鮮な驚きをもたらすこのプロジェクト。単なる商品の復刻以上に、時代のメッセージが込められているように思います。
初代缶に込められた“革命”
今でこそ当たり前になった「缶コーヒー」ですが、その始まりがUCCだったことを知っている人は意外と少ないかもしれません。創業者・上島忠雄氏が、「喫茶店に行かなくても、コーヒーをどこでも飲めるように」と開発したのが、世界初の缶コーヒーです。
昭和44年(1969年)に誕生したその缶は、発売当初はまったく売れなかった。しかし、翌年開催された大阪万博での大量の人流と注目をきっかけに、爆発的な人気商品となりました。まさに「時代とともにヒットを掴んだ」プロダクト。現代のヒット商品にも通じる、“社会の変化を捉える力”がそこにはありました。
デザインにも宿る「伝統と革新」
復刻される今回の「UCCコーヒーミルク入り 缶250g」は、パッケージも初代のデザインを踏襲。焙煎した豆の“茶”、コーヒーの花の“白”、熟した実の“赤”という三色が、時代を超えて視覚に訴えかけてきます。
この配色、実は令和元年には“色彩のみの商標”として登録されており、食品業界では全国初。見た瞬間に「UCCだ」と分かる識別性は、ブランドが長年築いてきた信頼の証といえるでしょう。
万博という「未来」の場で、振り返る「原点」
万博とは、いつの時代も未来を示すショーケースです。その未来の入り口で、あえて「過去を振り返る」というUCCの選択には、マーケティング以上の深みがあります。
私たちは今、AI、宇宙、サステナビリティ、メタバースといった新しい価値観の時代を生きています。そんな中で、「原点に立ち返る」ことは、一見逆行のように見えて、実はとても強いメッセージ。あの頃、まだ缶コーヒーという概念すらなかった世界に、UCCが示した“手軽さ”という新しい発想。それをもう一度、万博の熱気の中で再現しようとしているのです。
未来のために「懐かしさ」が必要な時代
世の中がどれほど変化しても、ヒットするモノには「人の心を動かす」理由があります。ノスタルジーはその一つの鍵です。そしてそれは、決して“後ろ向き”な感情ではなく、未来への原動力になる感情。
UCCの復刻缶は、昭和・平成・令和をつなぐ一本の“記憶のタイムカプセル”。それを開けるたびに、私たちは「過去の創造が今の当たり前をつくった」ことに気づかされるのではないでしょうか。
最後に
大阪万博がまもなく開幕する今、私たちに求められているのは「新しさ」と「懐かしさ」のバランスなのかもしれません。UCCの復刻缶が、その象徴になる――そんな気がしてなりません。
あなたもぜひ、手にとってみてはいかがでしょうか。未来へ向かう前に、ちょっと立ち止まって“原点の味”を感じてみるのも悪くありません。