特許切れ医薬品を「一体の市場」として捉える意味― 東和薬品と大塚製薬の協業が示す、国内医薬品産業の次の姿 ―

東和薬品が大塚製薬と締結した、特許切れ医薬品の安定供給に関する協業は、単なる企業間提携にとどまらず、国内医薬品産業の構造そのものを問い直す取り組みとして注目されます。今回の説明会で示された構想は、「特許切れ=役割終了」という従来の発想を超え、医薬品を社会インフラとして持続的に支えるための新たな枠組みを提示しているように見えます。

「第1弾」に込められたメッセージ

東和薬品の吉田逸郎社長は、今回の協業を「第1弾」と位置づけました。この表現が示すのは、大塚製薬との連携が特例ではなく、今後の標準モデルになり得るという意思表示です。先発薬メーカー、後発薬メーカー、さらには製造受託企業まで含めて幅広く対話を重ねるという方針は、企業の垣根を越えた産業全体の再設計を意識したものといえるでしょう。

特に重要なのは、特許が切れた医薬品を「一体の市場」として捉える視点です。これは、先発か後発かという区分ではなく、「治療上必要な医薬品を途切れさせない」という目的を最上位に置く考え方であり、供給責任を産業全体で共有しようとする姿勢がうかがえます。

失われてきた「先発の知」をどう守るか

医薬品業界では、特許切れ後に後発医薬品への置き換えが進む一方で、先発メーカーが長年培ってきた製造技術や品質管理のノウハウが十分に活用されないまま失われてきました。これは個社の問題ではなく、国内医薬品産業全体にとっての損失です。

今回の協業では、大塚製薬が蓄積してきた製造データや技術を、東和薬品が後発医薬品の開発や製造に活用することも視野に入れています。これは、知見を「競争のための囲い込み」から「産業のための継承」へと位置づけ直す動きであり、次世代に技術をつなぐという点で大きな意義があります。

承継と受託という柔軟な選択肢

協業の具体像として示されたのは、製造・販売権を東和薬品が承継する形と、大塚製薬が販売権を維持したまま東和薬品が製造を受託する形の両立です。この柔軟性は、医薬品ごとの特性や需要動向に応じて最適な供給体制を構築するために不可欠です。

画一的な「後発化」ではなく、医薬品ごとに最も安定した形で供給を続ける仕組みを選択できる点に、実務的かつ現実的なアプローチが感じられます。

国内自給率と地域経済という視点

吉田社長が強調した「医薬品の国内自給率の高さ」と「地域経済への貢献」は、この協業の社会的意義を象徴しています。医薬品は安全保障や公衆衛生とも密接に関わる分野であり、国内で安定的に生産できる体制を維持することは極めて重要です。

今回の取り組みは、単に供給不足への対症療法ではなく、国内生産基盤を持続させるための構造的な試みといえます。医薬品産業を「コスト競争の場」から「社会を支える基盤産業」へと再定義する動きとしても評価できるでしょう。

おわりに

東和薬品と大塚製薬の協業は、特許切れ医薬品を巡る課題に対し、産業全体で向き合うための一つの解答を示しています。今後、この「第1弾」がどのように広がり、他社を巻き込みながら新たな標準を形成していくのか。医薬品の安定供給と技術継承という二つの軸から、引き続き注目していきたいテーマです。