はじめに
フランスの著名アパレルブランドであるラコステ(Lacoste)が、長年にわたり争ってきた知的財産権訴訟において、中国の裁判所で勝訴したというニュースが報じられました。本記事では、この訴訟の背景、経過、そしてその影響について考察します。
ラコステと中国企業の歴史
ラコステは1933年にフランスのテニス選手ルネ・ラコステによって設立され、ワニのロゴマークで知られています。このロゴは、ルネ・ラコステが「ル・クロコダイル(ワニ)」という愛称を持っていたことに由来しています。アジア市場への進出の際、ラコステは香港とシンガポールの企業が似たワニのロゴを使用していることに気付きました。当初は両者の間で「住み分け」が成立し、問題は表面化しませんでした。
問題の発端
問題が本格化したのは、中国本土市場への進出を巡ってです。ラコステが1980年に中国市場に参入し、ロゴマークの登録を行いました。一方、香港のCROCODILE GARMENTS (CGL)とシンガポールのCROCODILE INTERNATIONAL(CI)は当初、中国本土に進出する意図がなく、その後「Cartelo(カルテロ)」ブランドとして展開しました。カルテロは後に中国企業南極電商の傘下に入りました。
初期の訴訟と敗訴
ラコステは約10年前にカルテロのロゴマークが自社の知的財産権を侵害しているとして訴訟を起こしましたが、北京高級人民法院(高裁)と中国最高人民法院(最高裁)は、消費者の混同や誤認を引き起こすことはないとしてラコステの主張を退けました。また、カルテロが登録した商標についても、ラコステの訴えは退けられました。
勝訴の背景と意義
今年になって北京高級人民法院がラコステの新たな訴訟でラコステ側の主張を認めました。裁判所は、ラコステのワニのマークが2006年時点ですでに中国で有名であり、カルテロ側にはラコステの評価に便乗しようとする意図が明確にあったと判断しました。この判決により、南極電商と関連会社はラコステに対して賠償金の支払いを命じられました。
考察:知的財産権保護の重要性
ラコステの勝訴は、中国市場における知的財産権保護の重要性を示す一例です。国際ブランドが新興市場に進出する際には、その商標やロゴの保護が極めて重要です。特に、模倣品や類似ブランドが市場に存在する場合、消費者の混同を防ぐためにも知的財産権の保護は欠かせません。
結論
ラコステが今回の訴訟で勝訴したことは、同社にとって大きな勝利であり、中国市場におけるブランドの地位を再確認するものです。また、中国の司法機関が知的財産権を重視する姿勢を示したことも重要です。今後も国際ブランドが中国市場での競争力を維持するためには、引き続き知的財産権の保護に注力する必要があるでしょう。