近年、YouTubeショートやTikTokなどのショート動画共有サービスで、映画やテレビ番組を短く要約した「ファスト映画」や「海賊版クリップ」が頻繁に投稿されています。これらのクリップは著作権侵害として問題視されていますが、北京大学の研究者たちによる最新の研究では、特定の条件下でこれらの海賊版クリップが逆にコンテンツの宣伝に寄与する可能性が示されました。
バイラル・ビデオとしての海賊版クリップの役割
バイラル・ビデオとは、インターネット上で爆発的に拡散される動画を指します。著作権を侵害する海賊版クリップも、こうしたバイラル・ビデオとして広まることがあります。従来、このような違法行為は即座に否定的に捉えられてきましたが、近年の研究や議論は、これらの海賊版クリップが一種の無料広告として機能し、オリジナルコンテンツの視聴者数を増やす可能性があることを示唆しています。
北京大学の研究が示す海賊版クリップの可能性
北京大学光華管理学院の研究者たちは、TikTokの中国版である抖音(ドウイン)を対象に、テレビ番組を短く編集した海賊版クリップがストリーミングサービスに与える影響を調査しました。その結果、海賊版クリップが削除されることで、ストリーミングサービスでの正当な視聴数が3％減少することが明らかになりました。これは、海賊版クリップが実際にはストリーミングサービスの需要にプラスの影響を与えていることを示しています。
特に、複雑なストーリーラインを持つテレビシリーズや、犯罪／ミステリー、ファンタジーなどのジャンルは、海賊版クリップの恩恵を受けやすいことも発見されました。これらの作品は、短いクリップだけでは「これだけで十分」とはならず、逆にオリジナル作品への興味をかき立てる効果があると考えられます。
二律背反的な課題
しかし、すべての海賊版クリップが同じ効果をもたらすわけではありません。また、違法行為を正当化することはできないため、権利者やプラットフォーム運営者がどのように対応するべきかは依然として難しい課題です。研究者たちは、短く編集された海賊版クリップがオリジナル作品の視認性を高める波及効果を生み出す可能性を指摘していますが、その一方で、作品の品質やストーリーの魅力が高ければ高いほど、その効果も大きくなるとしています。
結論
この研究は、海賊版クリップが単なる違法行為ではなく、場合によってはオリジナルコンテンツの普及に寄与するという逆説的な側面を浮き彫りにしています。しかし、著作権保護の観点からは、依然として厳格な対応が求められることは間違いありません。この二律背反の現象をどう捉えるかは、今後のコンテンツ産業と政策立案において重要なテーマとなるでしょう。
