ブラジルPPHフェーズVとは?
2025年1月から2029年12月末まで、ブラジル産業財産庁が新たに発表したPPH(Patent Prosecution Highway)パイロットプロジェクト フェーズVが実施されます。
今回のフェーズVでは、以下の変更が注目されます。
- 申請件数の上限
年間800件 → 3,200件 へ大幅拡大
- PCT-PPHの上限
廃止
- 国際特許分類(IPC)ごとの上限
年間250件 → 1,000件 に増加
これにより、ブラジルでのPPH申請の自由度が向上し、これまで発生していた「枠の取り合い」が緩和されることが期待されます。
背景:なぜPPHの上限拡大が必要だったのか?
ブラジルでは、PPH制度は大きな人気を集めており、2024年も以下の通り早期に上限に達していました。
- PCT-PPH
3月に到達
- PPH全体
7月に到達
この状況は、出願人にとって大きな課題でした。限られた枠を確保するために、申請時期を調整しなければならず、最適なタイミングでの申請が難しくなっていたのです。
そのため、今回の件数拡大は、ブラジルにおける特許出願の「渋滞解消」と「柔軟性の向上」に大きく寄与するでしょう。
申請件数の拡大がもたらすメリット
- 時期の自由度が向上
出願人は、ブラジル市場に合わせた適切なタイミングで特許を取得しやすくなります。これにより、事業展開や知財戦略の精度が向上することが期待されます。
- 企業競争力の強化
ブラジルは経済成長が続く新興市場の1つ。早期に特許を取得することで、ライバル企業に先駆けて権利を確保できるため、競争力強化につながります。
- PCT-PPHの上限廃止
PCT出願を活用する企業にとっては朗報です。これまでPCT-PPHの100件という制約がありましたが、これが撤廃されたことで、より多くの企業が国際段階の成果物を有効に利用できるようになります。
課題はないのか?
上限拡大は歓迎される一方で、以下のような懸念点もあります。
- 審査官リソースの確保
件数が増加することで、審査の質やスピードが低下しないか。
- 申請の集中
特に人気のある分野や時期に申請が集中すれば、新たな「ボトルネック」が生じる可能性も。
ブラジル産業財産庁が、審査体制の強化と効率化を同時に進めることがカギとなるでしょう。
ブラジル市場を狙う企業へのアドバイス
今後、PPHフェーズVを活用するためには、次の点が重要です。
- 特許出願の計画的な準備
早期審査を受けるためには、先行審査庁(例:日本、米国)での権利化を早めることがポイントです。
- PCT出願の活用
PCT-PPHの上限撤廃を活かし、国際出願戦略を再構築しましょう。
- ブラジル市場の理解
市場調査と合わせて、どの技術分野で権利化するかを明確にすることで、特許の実効性が高まります。
まとめ:フェーズVは大きなチャンス
ブラジルのPPHフェーズVは、特許取得のスピードと柔軟性を大幅に向上させる重要な変更です。
特に国際的に展開する企業にとって、ブラジル市場は大きな魅力を持つだけに、知財戦略の再構築が不可欠です。
今後のブラジル市場を見据え、PPH制度をフルに活用して、ビジネスを加速させましょう!