最近、生成AI(例えば、Chat GPTやMidjourneyなど)の驚異的な性能が注目されていますが、それと同時に、生成AIによって他人の著作物の類似物が生成された場合の著作権侵害についての法的問題が世界的に議論されています。この問題は、日本でも政府の文化審議会著作権分科会法制度小委員会が「AIと著作権に関する考え方」で検討されています。
一方、中国では、2024年2月8日に広州インターネット法院が画像生成AIによる著作権侵害を初めて認める判決を下しました。本稿では、この判決の概要を紹介するとともに、日本の「考え方」と比較し、両者の共通点と相違点について考察します。
中国の判決の概要
広州インターネット法院は、画像生成AIによって生成されたウルトラマンの画像について、生成AIサービスの提供事業者による著作権侵害を認めました。具体的には、被告が提供するAI画像生成機能を利用して、原告の著作権を侵害するウルトラマン画像が生成されたことが問題となりました。
判決では、生成された画像が原告のウルトラマン画像と非常に高い類似性を持ち、その独創的表現を保持していると認定されました。また、被告は著作権侵害の予防措置を講じていなかったことが問題視され、損害賠償の支払いと生成機能の停止が命じられました。
日本の「考え方」との比較
日本の「考え方」では、生成AIによる著作物の生成行為や利用行為が既存の著作物の著作権侵害に当たる可能性について検討されています。特に、AI開発事業者やサービス提供事業者が著作権侵害の行為主体として責任を負う場合についても言及されています。
両者の共通点として、被疑侵害物の類似性と依拠性が認定基準として用いられている点が挙げられます。また、AIサービス提供者の注意義務についても、両者が類似した見解を示していることが分かります。
今後の展望
このような判決や考え方が示される中で、生成AIに関連する法的問題はますます重要な課題となっていくでしょう。AI技術の発展と共に、法制度も進化し続ける必要があります。著作権侵害を防止しつつ、生成AIの技術革新を支援するためのバランスが求められます。
このような議論を通じて、AI時代における著作権法の在り方についてさらに深い理解が求められます。これからも、法的視点から生成AIに関する問題を注視していく必要があります。