沖縄のソウルフードとも言える「TULIP」「Jef」「シママース」「キングタコス」を展開する4社が、名護市の企業「琉球ワークス」による商標出願に対して声明を発表したニュースが話題になっています。本記事では、この問題を商標法の観点や地域ブランドの保護という視点から考察していきます。
何が問題なのか？
今回の件では、琉球ワークスがTシャツやステッカー、タオルといったグッズ分野での商標登録を出願しており、4社側はそれを「商標法の予定する秩序に反する」として抗議しています。
商標とは、本来は事業者が商品やサービスを区別するためのものですが、日本では 「先願主義」 が採用されており、先に出願した者が優先されるという原則があります。そのため、企業が自らのブランドを保護しないと、第三者によって商標が登録され、自由に使用できなくなる可能性があるのです。
琉球ワークスの社長は「先に取られる前に」と善意を強調していますが、4社の意向とは無関係に登録を進めたことが問題視されています。
地域ブランドの保護の難しさ
今回のケースは、沖縄の地域ブランドに関する問題としても重要です。たとえば、「シママース」や「キングタコス」といった名称は、沖縄の文化と深く結びついており、単なる企業ブランド以上の意味を持っています。
しかし、日本の商標制度では「地域名＋一般名称」のような形では商標登録が認められにくいこともあり、地域ブランドが十分に保護されないことが多々あります。そのため、今回のようにグッズ類の分野での商標を第三者に出願されるリスクが発生してしまうのです。
たとえば、以前「くまモン」の商標を熊本県が早い段階で登録し、多くの企業とライセンス契約を結んだことで適切なブランド管理ができたケースがあります。沖縄の企業も同様に、地域ブランドとしての保護をより積極的に進める必要があるでしょう。
企業側の対応と今後の展開
今回のケースでは、4社が特許庁に経緯を情報提供しており、今後の審査結果によっては琉球ワークスの出願が却下される可能性もあります。また、琉球ワークス側も「出願取り下げ」や「登録後の譲渡」などを検討していることから、話し合いによる解決の余地もありそうです。
もし特許庁が商標登録を認める場合、4社は琉球ワークスとライセンス契約を結ばないとグッズ展開ができなくなる可能性があります。企業側が事前に商標登録を行わなかったことが、結果的にこの問題を引き起こしたとも言えるでしょう。
商標問題への対策
今回のケースを教訓として、以下のような対応が求められます。
- 企業側の商標意識向上
4社のように、食品業界に特化した企業はグッズ販売を想定していないことも多いですが、今後は事業拡大の可能性を考えて広範囲での商標登録を検討すべきです。
- 地域ブランドの包括的な保護
沖縄の伝統的な食品や文化的アイコンに関しては、県や商工会議所が主体となって商標を保護する仕組みを整えることも重要です。
- 商標法の見直し議論
先願主義のもとでは、商標の「抜け道」を使った第三者の出願が問題になることも多いため、商標法の運用について議論が必要かもしれません。
まとめ
今回の商標問題は、単なる企業間のトラブルではなく、沖縄の地域ブランドの在り方を考えさせられる出来事です。企業側が商標に対する意識を高め、地域ブランドの保護をより積極的に進めることが、同様の問題を防ぐ鍵となるでしょう。