信頼を損なう「観光PR」
沖縄観光の魅力を広く伝えることを目的としたPRサイト「オキナワンパールズ」で、プロ写真家の作品が無断で改変・掲載されていた問題が波紋を呼んでいます。単なる著作権侵害という枠を超え、今回注目すべきは「国家機関による違法行為の可能性」と「不起訴判断に対する市民感覚との乖離」です。
問題の概要:写真家の権利が踏みにじられた経緯
- 被害を受けたのは札幌市在住のプロ写真家。
- 写真は無断使用のみならず「改変」もされていた。
- 写真の使用を主導したのは当時の内閣府沖縄総合事務局の局長とされる。
ここで問われるのは、明確な著作権侵害行為が「組織的に」行われていた可能性があるという点です。
地検の判断と検察審査会の反応
- 那覇地検石垣支部は当初、内閣府について不起訴(嫌疑なし)と判断。
- これに対し、石垣検察審査会は「不当」と議決。
- 理由:「一般人の常識や感覚から大きく乖離しており、納得できない」
この指摘は、法的な形式論ではなく、公共機関に対する「市民目線」の健全な感覚から出たものといえるでしょう。
公的機関と著作権:なぜ「組織ぐるみ」は重いのか
著作権法は創作者の人格と労力を保護するための根幹的法律です。これを破る行為が国家機関から発せられたとなれば、極めて重大です。
- 一般企業なら訴訟で賠償責任を問われるケース
- 公的機関には「法令遵守義務」がより強く課される
- 公金で運営されるPRにおける不正利用は二重の裏切り
再捜査の意味:信頼回復に向けた試金石
石垣検察審査会の議決を受け、那覇地検石垣支部は再捜査に入ります。これは単なる手続きではなく、次のような社会的意義を持ちます。
- 官民間の著作権意識の差を是正する契機
- 検察の中立性と市民の司法参加の価値を再認識
- 今後の行政の情報公開・説明責任への圧力
ルールを守る観光PRへ
沖縄の美しさを世界に伝えることは重要ですが、その手段がクリエイターの尊厳や法令を犠牲にしては本末転倒です。観光も信頼も、土台にあるのは「正当な手続き」と「透明な説明責任」。今回の再捜査が、観光行政と表現の自由との健全な関係を築くきっかけになることを願います。