オレオ vs アルディ ― “そっくり”は罪か?ブランド模倣を巡る法廷バトルの行方

「このオレオ、ちょっと違う?」
そう思ったとき、すでにブランドの世界では深刻な争いが始まっているかもしれません。

2025年5月、オレオやチップスアホイ!で知られるモンデリーズ・インターナショナル社が、ドイツ発のディスカウントスーパー「アルディ」を提訴しました。訴えの内容は「パッケージがあまりにも似ている」という、いわゆる“トレードドレス”を巡るものです。

ブランドは「味」だけではない

モンデリーズが問題視しているのは、単なる味や形ではありません。訴状によれば、アルディのプライベートブランド商品はモンデリーズのパッケージデザインや色使い、さらには雰囲気に至るまで「紛らわしいほど似ている」と指摘。これにより、消費者が混乱し、モンデリーズのブランド価値が損なわれると主張しています。

ここで重要なのは、「デザインもブランドの一部」であるという考え方。欧米ではとくに、商品の“見た目”も知的財産として保護される傾向が強く、過去にもApple vs Samsungのスマホ訴訟など、多くの例があります。

アルディの「安さ戦略」と模倣リスク

アルディは、低価格で高品質なPB(プライベートブランド)商品を売りにし、近年は米国でも勢力を拡大しています。しかし、そのビジネスモデルが時として「本家そっくりの商品」を生み出してしまうことも。

実際、アルディは過去にも英Thatcher’s Ciderや金融サービス会社の商品模倣で訴訟に巻き込まれており、今回が初めてではありません。

では、なぜ消費者は「本物ではない」と知りながらPB商品に手を伸ばすのでしょうか?

「似てるけど安い」に惹かれる消費者心理

ここに見えるのは、“ブランド価値”と“価格”のせめぎ合いです。
SNSでは「味はむしろアルディの方が好き」「オレオよりコスパが良い」といった声もあり、食べ比べの結果を投稿するユーザーも増えています。

これは単に価格だけの問題ではなく、「どこまでが模倣で、どこからが独自性なのか」を巡る現代の消費者文化の一端とも言えるでしょう。

結末が示す「今後のPB戦略」

モンデリーズは損害賠償に加え、今後の類似商品の販売禁止を求めています。この裁判の行方次第では、PB商品全体のデザイン戦略にも影響が出る可能性があります。もしアルディが敗訴すれば、今後はより差別化されたパッケージ開発が求められるでしょう。

逆に、アルディが勝訴あるいは和解に持ち込めば、他のPBメーカーにとっては“ギリギリを攻める”商機と映るかもしれません。

模倣と独創のあいだで

今回の争いは単なる「クッキーの話」ではありません。
ブランドとは何か、模倣はどこまで許されるか、そして消費者がどこに価値を見出すのか。私たちの買い物習慣や企業の戦略にまで影響を及ぼす問いが、今、法廷で審議されています。

今後の判決や和解内容によって、PB商品のあり方が根本から見直されるかもしれません。
“オレオとそっくりな何か”は、果たしてどこまで許されるのでしょうか?