英国知的財産庁(UKIPO)が6月17日に公表した「模倣品追跡調査(Wave4)」は、近年の模倣品に対する消費者意識と行動の変化を浮き彫りにしています。2019年から継続的に行われてきたこの調査は、模倣品(偽造品)をめぐる実態とその背景にある心理を明らかにし、知的財産権保護のための貴重な資料となっています。
減少傾向にある模倣品購入率
今回の調査によれば、「過去に模倣品を購入したことがある」と答えた人は24%と、前回(第3弾)から5ポイント減少し、「現在も購入している」との回答も15%にとどまりました。特筆すべきは、「一度も購入したことがない」とする人が76%を占め、消費者全体として模倣品への拒否感が高まっていることがうかがえます。
この変化は、知的財産保護の観点からは歓迎すべき進展ですが、なぜ今このような傾向が生じているのでしょうか。
若年層の“模倣品許容”とそのリスク
年齢別の分析では、模倣品の購入経験は若年層に集中しています。特に25〜34歳での現在購入率は27%と高く、Z世代からミレニアル世代の一部には、模倣品への寛容さが残っている様子が見て取れます。
これは、価格重視の消費行動やSNS映えを目的とした“見た目重視”のトレンドとも関連していると考えられますが、その一方で、安全性や倫理的課題に対する認識が不十分な可能性も指摘できます。
オンライン購入の拡大とカテゴリ別傾向
模倣品の購入経路としては、依然としてオンラインが主流です。特に「化粧品・トイレタリー製品」ではオンライン購入が増加しており、利便性の裏で消費者が偽物に触れる機会が増えている現状が明らかになりました。
カテゴリ別では、「衣類・靴・アクセサリー」「スポーツ用品」が上位を占め、特にファッション・ライフスタイル系商品での模倣品流通が多いことが伺えます。これは、ブランド価値が強く、模倣品の需要が根強いカテゴリであることを示しています。
消費者の心を動かす“倫理と健康”の訴求力
今回の調査で注目すべきは、模倣品に対するメッセージの効果検証です。健康被害(肌トラブルやアレルギー)や児童労働といった「倫理・安全」に訴えるメッセージが、消費者の感情に強く響き、「購入をやめる(可能性がある)」との回答が9割近くに達しました。
単なる「違法です」「品質が低い」といった訴えよりも、「あなた自身の健康」や「社会的な責任」に結びつけた情報発信が、実際の行動変容を引き起こしやすいという結果は、今後の啓発活動にとって極めて有益な知見です。
模倣品対策は“共感と実感”で挑め
模倣品の撲滅には、法的対策だけでは限界があります。今回の調査が示したように、消費者一人ひとりの「自分ごと化」を促すアプローチこそが、行動変容を生む鍵となります。特に若年層に向けた「感情に訴えるメッセージ」は、今後ますます重要性を増すでしょう。
ブランドや政府機関、プラットフォーム事業者が連携し、倫理的かつ安全な消費行動を支える環境づくりをどう進めていくかが、次の課題と言えるのではないでしょうか。