再建のラストチャンスか? ジャパンディスプレイがいちごトラストと資金調達で再びタッグ

経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)が、筆頭株主であるいちごトラストに新株予約権を割り当てる形で約956億円を調達すると発表しました。さらに、茂原工場の土地・建物や一部の特許もいちご側に譲渡するという、大胆な資産再編も同時に実施されます。これは果たして「再建の決定打」になりうるのか――。

JDI再建のこれまで:長期低迷と希望の光

JDIは、かつては中小型液晶の国内代表格として高い技術力を誇っていましたが、スマートフォン市場の成長鈍化や中韓勢との価格競争に苦しみ、長年赤字体質から抜け出せない状況が続いています。

2019年にはいちごアセット(現いちごトラスト)が筆頭株主として経営支援に乗り出し、以降も度重なる資金調達や構造改革が続けられてきましたが、抜本的な黒字転換には至っていません。

今回の資金調達の中身:低価格の新株予約権と資産売却

今回、いちごトラストに対して割り当てられる新株予約権の行使価格は25円。これは、前回発行された予約権(行使価格45円)よりもかなり低い水準です。現在の株価が25円前後であることを考えれば、現実的に行使される見込みのある水準といえるでしょう。

同時に、茂原工場や関連特許の譲渡によって得られる資金を、いちごトラストからの650億円の借入金返済に充てることで、バランスシートの健全化を図ります。さらに、調達資金は以下の分野への集中投資に使われる予定です。

  • 高付加価値ディスプレイ(例:医療・車載向け)
  • センサー開発
  • 半導体パッケージの量産体制整備

JDIが従来の「汎用品」から脱却し、高付加価値なニッチ領域への特化を目指している姿勢がここから読み取れます。

注目すべきポイントと残るリスク

  • 株主希薄化のリスク

予約権が行使されれば、発行済株式数が大きく増え、既存株主の持ち株比率は低下します。

  • 資産切り売り感の否めなさ

茂原工場や特許は、かつての主力資産。今回の譲渡は、ある意味で“最後の玉”を切ったとも言えるかもしれません。

  • いちごトラストとの関係性の深化

これでいちごが実質的な“親会社”としての位置づけを強め、経営への影響力がさらに強まるのは必至です。

今後のJDIを見る視点

今回の資金調達が意味するのは、「延命」ではなく「再挑戦」の可能性です。過去のような量産液晶市場ではなく、高機能・高価格帯への転換が成否を分ける鍵となります。

  • 技術力は依然として高いとされるJDIが、本当に高付加価値市場で勝負できるのか?
  • パートナーであるいちごトラストのビジョンと実行力は、JDIをどこまで再構築できるのか?

これからの動向は、日本の製造業再生の一つの象徴的なケースとして注目に値します。

今後の株価動向や実行計画の進捗にも、目が離せません。