米国特許商標庁(USPTO)は、意匠特許審査官向けの新たなAI画像検索ツール「DesignVision」を正式導入しました。本稿では、この革新的なツールの特徴と意義を考察し、国際的な知財実務へのインパクトについても掘り下げます。
DesignVisionとは何か:画像ベースの検索の革新
DesignVisionは、特許審査の現場においてAI技術を活用する試みの一環として誕生した、初の画像検索専用ツールです。これにより、出願人が提出した意匠画像をもとに、類似する既存の意匠や登録デザインを自動で検索できるようになります。特に注目すべきは、80以上の国や地域の意匠・商標データベースに横断的にアクセスし、画像類似度に基づく検索結果を提供する点です。
AIは審査官の「補助ツール」──人間の判断を支える役割
USPTOは明確に「DesignVisionは他のツールを置き換えるものではない」としています。つまり、このツールは審査官の判断を補完するものであり、あくまで“サポート役”にとどまります。これは、AIの導入に対する過度な懸念や誤解を防ぐとともに、実務上の柔軟性を保つ設計思想とも言えるでしょう。
国際的影響:グローバルスタンダードとなる可能性
DesignVisionのユニークな点は、米国のみならず「外国の意匠コレクション」も対象にしている点です。これにより、グローバルでの意匠調査や先行事例の確認が格段に効率化される可能性があります。特に、日本や欧州、中国など、意匠制度が活発な国との比較審査において重要な役割を果たすと考えられます。
意匠実務に与える今後の影響
AIによる画像検索は、意匠の新規性・創作性の判断における客観性を補完し、出願人にとっても審査の予見可能性を高める効果が期待されます。一方で、検索結果の解釈や類否判断には依然として人的な審美的評価が不可欠であることも忘れてはなりません。
DesignVisionの導入は、USPTOが掲げる「審査の迅速化・効率化」という方針を体現するものです。同時に、それは国際的な意匠制度の高度化と整合性の強化に向けた布石でもあります。今後、日本を含む各国特許庁においても、同様のAIツール導入の検討が進む可能性が高く、知財業界にとっては注視すべきトピックです。