ランキング結果の概要
国連の世界知的所有権機関(WIPO)が2025年版の「世界のイノベーション集積地ランキング」を発表しました。今年は中国の深セン―香港―広州地域が初めて首位を獲得し、昨年トップだった東京―横浜地域は2位となりました。
大阪―神戸―京都が11位、名古屋が28位に入り、日本からは3地域がランクインしています。一方で、国別に見ると中国が24地域、米国が22地域と圧倒的な存在感を示しました。
新興企業投資が順位を左右
今回のランキングで注目すべきは、評価基準に「新興企業への投資」が加味された点です。従来の国際特許出願や科学論文の発表数に加え、スタートアップ・エコシステムの活力がより直接的に反映されました。
深セン―香港―広州地域はまさにその強みを持ち、豊富なリスクマネーと国際的な起業家ネットワークを背景に急成長を遂げています。逆に言えば、東京―横浜地域は研究成果や特許出願では依然として世界有数でありながら、スタートアップ投資の面では相対的に遅れを取ったとも評価できます。
日本の課題と可能性
日本の3大都市圏がトップ100に入ったことは依然として技術基盤の強さを示しています。しかし、イノベーションの評価が「研究成果」から「社会実装・投資」へとシフトする中で、課題が浮き彫りになっています。
特にスタートアップ支援に関して、日本は資金調達環境や規制の柔軟性で欧米中に後れを取っているとの指摘が絶えません。東京―横浜地域が再びトップに立つためには、研究開発力を事業化につなげるエコシステムの強化が不可欠でしょう。
今後の展望
今回のランキングは、日本が「特許大国」から「イノベーション実装大国」へ変わるための試金石とも言えます。大学・大企業の研究成果をスタートアップに還流させ、リスクマネーを呼び込む仕組みを拡充できるかが鍵です。
また、名古屋や関西圏のランクインは、東京一極集中ではなく多地域型のイノベーション拠点形成の可能性を示しています。地域ごとの強みを生かし、世界と競えるエコシステムを築くことが、次の10年における日本の挑戦となるでしょう。