9月18日、中国商務部の何亜東報道官は、TikTokをめぐる問題について中国の立場を改めて表明しました。
その内容は大きく分けて三つの柱に整理できます。
「政治化・道具化・武器化」への警戒
何報道官は、TikTok問題を含む科学技術や貿易の課題が政治的に利用されることへの強い反対姿勢を示しました。
これは単なる外交的レトリックではなく、Huaweiや半導体規制など、近年続いてきた米中テクノロジー摩擦全体への批判ともいえます。技術を国家安全保障や政治的圧力の道具にする流れを牽制する意味合いが強いでしょう。
マドリード協議での「基本的枠組み」
9月14日〜15日にスペイン・マドリードで行われた中米貿易協議では、
- TikTok問題の「適切な解決」
- 投資障壁の削減
- 経済貿易協力の促進
といったテーマについて「基本的枠組み」に合意したと説明されました。
具体策はまだ見えませんが、両国首脳の電話会談を踏まえた「歩み寄りの余地」が確認された点は注目されます。
「企業の意志尊重」と「制度的審査」
中国政府は「企業の意志を尊重する」と強調する一方で、TikTokに関わる技術輸出や知的財産のライセンスについては法に基づき審査する立場を明確にしました。
つまり、「政府は支援するが、法制度の枠内で統制する」という二重の姿勢です。これは国内への説明責任と国際的な柔軟性の両立を狙ったものとみられます。
考察 ― 「公正な市場」とは誰の基準か?
中国側は米国に対し、「オープンで、公平、公正、非差別的なビジネス環境」を提供するよう求めています。しかし、米国側がTikTokを国家安全保障の文脈で捉えている以上、その「公平」の基準は容易に一致しません。
結局のところ、この協議の行方は 「技術と市場の自由」 vs 「安全保障上の懸念」 という二つの価値観のせめぎ合いにかかっています。
TikTokは単なる動画アプリではなく、中米関係の縮図として扱われているのです。
おわりに
今回のマドリード協議で「基本枠組み」が合意されたとはいえ、実際の妥協点はまだ不透明です。
TikTok問題は、中米の経済・技術摩擦がいかに「企業レベル」から「国家間の制度対立」へと広がっているかを象徴する事例といえるでしょう。
読者の皆さんは、「公平な市場環境」という言葉をどちらの立場から解釈しますか?