米国特許商標庁(USPTO)は、当面の間、前年の料金収入を原資とする運営準備金によって通常通り開庁・業務を継続すると発表しました。連邦政府の予算問題が取り沙汰される中でのこの声明は、特許出願人や代理人にとって大きな安心材料となります。
背景:政府機関と予算の関係
米国の政府機関は議会による予算承認を前提として運営されています。予算成立が遅れると「政府閉鎖(government shutdown)」に陥り、一部の機関は業務を停止します。しかしUSPTOは他の政府機関とは異なり、出願料や維持年金など利用者からの手数料収入によって運営されるため、ある程度の内部準備金を持ち続けることが可能です。今回の発表も、そうした財政的な独立性の表れと言えます。
出願人・実務家にとっての意味
当面の業務継続が保証されたことで、出願や審査請求、異議申立てなどの手続に大きな遅延は生じにくいと考えられます。過去の政府閉鎖時には、USPTOは準備金が尽きるまでは業務を継続し、その後に影響が出る可能性が指摘されました。つまり、「現時点での安心感」と「長期化すれば不透明」という二面性が常に付きまといます。
今後の展望と懸念
現段階では「until further notice(当面の間)」という表現が使われており、準備金の持続期間は明示されていません。もし予算問題が長期化すれば、審査処理速度や審判部門のリソース配分に影響が出る可能性もあります。特に外国企業にとっては、米国出願のスケジュールを見直す必要が生じるかもしれません。
まとめ
USPTOの今回の発表は、短期的には安心を与えるニュースですが、中長期的には不確実性を孕んでいます。出願人・代理人は現状に油断せず、万が一の業務停滞に備えたスケジュール管理や戦略の見直しを行うことが望ましいでしょう。