中国国家知的財産権局が発表した最新の知財統計を読むと、中国の知財政策が新しい局面に入っていることを強く感じます。国内の有効発明特許が500万件を超え、PCT国際特許出願件数が6年連続で世界1位という事実は、単なる数値の多さ以上の意味を持っています。これは、中国が「知財を国家戦略の中核に据える」という方針を揺るぎないものとして進めてきた結果だと考えます。
注目すべきは、人口1万人あたりの高価値発明特許が15.3件、戦略的新興産業の有効特許が140万件を超えたという点です。これらの指標は、研究開発活動の質が着実に向上していることを示しています。高価値特許の増加は、単なる“特許数の積み上げ”とは異なり、産業競争力や技術の独自性と直結する重要な要素だからです。
また、知的財産の活用が経済に与える影響も無視できません。特許集約型産業がGDPの13%以上を占め、著作権産業、GI産業も大きな付加価値を生み出しているという報告は、中国が知財を「守るもの」から「稼ぐもの」へと位置づけていることを示しています。知財制度が経済成長の推進力として機能し始めていると言えます。
梁氏が述べたように、「量の蓄積」から「質の向上」への転換は、これからの中国の知財戦略を理解する上での鍵になります。高価値特許の強化、重要技術分野での自主開発、計画的な知財活用政策の実行など、中国は知財を国家の科学技術自立の基盤として再定義しつつあります。
日本にとっても、この動きは他人事ではありません。グローバル競争において、知財は国家レベルでの技術力と産業力を支える最も重要な資源のひとつです。中国の加速する知財戦略をどう捉え、自国の政策にどう生かすかが、今後ますます重要になっていくと感じます。
