Appleの“人間の目”超えセンサーは何を変えるのか?未来のiPhoneカメラを占う

スマホのカメラが“目”を超える日が来るかも

先日、Appleが出願したある特許が話題を呼びました。
その名も「高ダイナミックレンジと低ノイズを備えた積層ピクセルを持つイメージセンサー」。技術畑の人でも一瞬ためらいそうな長さですが、要するに“めちゃくちゃ明暗に強いセンサー”のことです。

YMCinema Magazineが報じた内容によれば、この新センサーは20〜30Stopという驚異的なダイナミックレンジ(明るさの幅)を実現できるとのこと。

比較のために言えば、

  • 一般的なスマホカメラ

10〜13Stop

  • 映像業界の高評価カメラ「α7S III」

約15Stop

  • 人間の目の認識範囲

20Stop程度

これだけでも「Apple、やりすぎでは?」と思えるレベル。30Stopとなると、もはや観測衛星レベルの話です。

テクノロジーの核心は「積層ピクセル」

この特許で鍵となっているのは「積層ピクセル構造」。
簡単に言えば、1つのピクセルに対して複数の検出層を重ね、明るい部分は飽和させず、暗部はきちんと感知するという“いいとこ取り”の技術です。

さらに驚きなのが、ノイズ(画像のザラつき)も大幅に抑制される見込みだという点。つまり、真っ暗な夜景でも明るく、白飛びしがちな逆光でも自然にという理想にかなり近づける可能性があるのです。

スマホ用? それともApple Vision Pro用?

では、この技術はどこに使われるのでしょうか?

  • iPhoneの次世代カメラ

可能性は高いですが、30Stopという性能はオーバースペックにも見えます。

  • Apple Vision Proなどの空間コンピューティング用センサー

こちらはむしろ本命かもしれません。ゴーグル越しに“目で見たまま”のリアルな映像体験を再現するには、超高性能センサーが必須です。

  • ソニーやREDとの提携によるプロ向け映像機器

Appleが本格的に映像業界へ踏み込む布石という見方も。

実現するかどうかは「特許の常」

もちろん、特許出願=製品化ではありません。毎年、無数の“すごそうな技術”が特許のまま消えていきます。ですが、この特許の申請者Vladimir Koifman氏は、業界で名を知られたセンサー分野の専門家。彼のような人物が絡んでいるという点で、「実現可能性はかなり高い」と見ることもできるでしょう。

「写真は記録から“体験”へ」

もしこの技術がiPhoneに搭載される日が来たら、私たちのスマホ写真体験は根本から変わります。
目で見たまま、あるいはそれ以上のダイナミックレンジで世界を記録できる。
それはもう、“写真”というより“記憶の再現”に近いのかもしれません。

Appleの次の一手は、またしても“カメラの常識”を覆すことになるのでしょうか。
来年以降のiPhone、そしてVision Proの進化から目が離せません。

Appleが「人間の目レベル」のセンサーを本気で目指しているなら、それは“撮る”から“感じる”へのシフト。次のAppleイベントでは、ティム・クックが誇らしげに「This changes everything(すべてが変わる)」と語るかもしれませんね。