Larian StudiosがThe Game Awards 2025にて新作『Divinity』を発表しました。『Divinity: Original Sin II』以来となる同シリーズの完全新作ということで、多くのファンが歓喜に沸きましたが、一方で今回の発表にはユニークな背景がありました。イベント前から一部のファンの間で、新作の存在が予想されていたためです。
その理由は、EUIPOのオンラインデータベース「eSearch plus」に商標情報が掲載されていたことにあります。新作『Divinity』のロゴや特徴的なシンボルが公開されており、The Game Awardsの前にGeoff Keighley氏がXで公開した謎のオブジェとの関連性も指摘されていました。結果として“完全なサプライズ演出”は綻びが生じていたわけですが、Larian Studios自身はこの状況を逆手に取ります。発表後、公式アカウントのヘッダー画像を「eSearch plus」のスクリーンショットへ変更し、一般公開情報によって秘密が漏れてしまったことをあえてネタにしてみせました。
この対応は、現代のゲーム業界が置かれている状況を象徴しているように思います。かつては、制作側が情報を完全にコントロールしたうえでサプライズを演出できました。しかし、現在は商標データベースや認証情報の自動公開、SNSによる拡散など、情報の“非意図的な露出”は避けがたいものになっています。Larian Studiosの反応は、こうした透明性の高い時代における情報管理の難しさを、ユーモアをもって受け止めた好例だと感じます。
また、今回ナンバリングを排した『Divinity』というタイトルが選ばれたことも興味深いポイントです。イベント直前に、パブリッシングディレクターのMichael Douse氏が「Divinity: Original Sin 3」の予定はないと明言していましたが、その言葉どおり“ナンバリングの続編”ではなく、“シリーズの新たな出発点”としての『Divinity』が提示されました。ブランドを継承しつつも、既存シリーズに縛られない方向性を示したものとして注目に値します。
さらに、The Game Awardsで披露された発表演出は、シリーズの持つダークファンタジー的要素を強烈に印象づけるものでした。村人が儀式により巨大な像へと変貌するというショッキングな映像や、「the Hellstone」と名付けられた謎のオブジェとの結びつきは、本作がこれまで以上に壮大で重厚な世界観を志向していることを示しています。
Larian Studiosは『バルダーズ・ゲート3』によって世界的な評価を獲得しましたが、今回の新作はそれすら超える“史上最大のゲーム”を目指すと宣言されています。30年にわたる開発経験と技術的蓄積を新たな形で結実させる試みとして、非常に期待が高まります。
完全なサプライズにはならなかったとはいえ、今回の『Divinity』発表は、ゲーム文化と情報社会が交錯する現代ならではの象徴的な出来事だったといえます。今後の続報が待ち遠しいばかりです。
